こんにちは。はしまさです。
分かりにくい話に、「自働債権」と「受働債権」という言葉があります。
普段は使わない言葉かもしれませんが、私が直近関わることがあったので、情報提供です。
基本的なことになるので、あ〜そうなんだ〜って理解いただけたらOKです。
◆ 相殺とは?
相殺(そうさい)=「お互いに債権と債務を持っているとき、差額だけの清算で済ませること」
例えば、
- 私がAさんに【10万円】貸してる(私の「自働債権」)
- Aさんが私に【8万円】貸してる(私のの「受働債権」)
→私が相殺するといった場合の自働債権と受働債権になると理解ください。
そして、この場合、私が「相殺する」と言えば、Aさんは2万円だけ私に返済すればOKになるってことです。
相殺に関する法律の条文(民法 第505条~509条)
民法第505条【相殺の要件】
相殺が成立するための基本的なルール(3要件)は以下のとおり。
要件 | 内容 |
---|---|
① 同種の目的 | 債権の種類が同じ(例:金銭と金銭、米と米)であること |
② 双方が弁済期にあること | 両方の債権の支払期限が来ていること |
③ 相殺適格性 | 相手の債権が差押禁止などでないこと |
民法第506条【相殺の方法と効力】
- 相殺は一方的な意思表示だけで成立(裁判所いらない)
- 相殺の効力は「対当時点(両方の債権が弁済期になったとき)に遡って」発生する
- 受働債権が期限の利益を失ったときも、相殺できる(←ここ重要)
民法第507条【債権譲渡と相殺】
- 相手の債権が第三者に譲渡されても、譲渡前から相殺できる状態だったら相殺できる
民法第508条【第三債務者の相殺】
- 債権が差し押さえられたときでも、差押え前から相殺できる状態だったらOK
民法第509条【不法行為による債権との相殺禁止】
- 不法行為で生じた損害賠償請求権に対しては、相殺できない!
- 加害者が「じゃあこっちの貸金で相殺ね」は許されない
相殺に関する用語まとめ
用語 | 意味 |
---|---|
自働債権 | 自分が相殺に使う債権(自分が持ってる債権) |
受働債権 | 相手が自分に対して持ってる債権(打ち消したい債務) |
期限の利益 | 返済期限まで待ってもらえる権利(これを失うと相殺が可能に) |
相殺の効果・特徴まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
成立方式 | 一方的な意思表示でOK(相手の承諾いらない) |
効果発生時期 | 弁済期にさかのぼって(遡及効) |
手続き | 「相殺する」と通知すれば成立(ただし明確に伝える必要あり) |
訴訟中の相殺 | 裁判中でも、反論として「相殺の抗弁」可(訴訟相殺) |
相殺ができない・制限される主なケース(再掲)
禁止される相殺のケース | 根拠 or 理由 |
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差押禁止債権との相殺 | 民法506条2項(例:給料、生活保護) |
不法行為による損害賠償との相殺 | 民法509条 |
契約で相殺禁止とされている | 契約自由の原則により有効 |
債権の弁済期が未到来 | 民法505条:弁済期が来てないと原則NG |
信義則に反する相殺 | 判例法理(相手を著しく害するようなケース) |
よく出る実務例
シチュエーション | 相殺できる? |
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給料から天引きで借金返済 | ✕ 原則できない(差押禁止債権) |
保証人が債務者に対して持ってる債権で相殺 | △ 条件付きで可能(債務者が主債務不履行など) |
破産した相手との債権債務 | ◎ 債権届前なら相殺可能(破産法72条など) |
補足:訴訟相殺と自働債権の消滅時効
相殺において、自働債権がすでに時効消滅していた場合でも、以下の条件を満たすと相殺可能なことがあります。
- 時効で消えたあとに相殺の意思表示をしても、受働債権の弁済期より前に自働債権が弁済期になっていればOK(民法507条但書的扱い)
最後に
相殺する際には、どのような注意が必要なのか、どのような取り決めで相殺できるのかなどを理解しておくと、もし誰かに聞かれたときに回答できるので、頭の片隅に置いておいてください。
もし、忘れても、この記事を思い出して、読みにきたら、それでも問題はないかと思いますので、そのような活用方法でも結構です。
私の中では、この記事がイケスとなり、私の知識の保管先となるように作っていますので、皆さんも何か立ち戻る時などは活用ください。
では!またね!